飛花落葉


静寂の中に一人でいると脳みそが喋り続けて鬱陶しい。一度考え始まると頭を破裂させる勢いで忙しなく喋り続け、目の前に心象風景を映し続けるもんだから眩暈やら頭痛やら、それによる不安で焦ってしまう。どうしたもんか。

平日だと言うのに予定は空っぽで、朝から携帯が震える事もなく、やりようのない不安と手持ち無沙汰を何とか解消するために部屋をでた。

くだらない理由をつけて遠くへいこう。

あいにく天気は良好だった。


フロントガラスを貫通して伝わってくる暖かい空気に、すっかり春になったなぁと思いがけず独り言がでる。

どれくらいの時間ハンドルを握っていただろうか。何処にでもあるような取るに足らないショッピングモールについた。

膨大な分母の中で、自分の欲求を満たしてくれる商品は何処を探せど見当たらず、途方にくれた。

最終的に子羊のフィギュアとCDを買って、また知らない街をのらりくらり彷徨った。

休日を無駄にしないという密かな目標を果たすべく外に出たものの、ガソリンを派手に消耗しただけだった。

元の木阿弥、しかし、いい気分転換にはなった。

そして一日が終わる。


脱衣所の電灯が付かなくなっていた。

なんの前触れもなく、気がつけば死んでいた。

最近、上の空でいる隙に物事が終わっている。しっかりしてほしい。

ドラマを見逃したり、ラジオを聴き逃したりするのはまだいい。

卒業制作展が終わり、二月があっという間に終わり、

そういえば卒業していた。

お世話になった各方面に感謝の気持ちをろくに伝えもせずに過ぎ去ってしまった。 

お腹にぽっかり空いた穴を、冷たい風が通り抜けるような違和感に陥る。

目を開けたまま夢を見ているようだ。

終わりがハッキリしないせいで愚図ついたままいることが多い。

電球をくるくると反時計回りに回しながら、こうやって時間を反時計回りに回せたらなぁとくだらない思考を巡らせる。電球に新しい光を灯すには、時計回りに締めなければならない。

得てしてそういう事なんだろうと勝手に納得する。

"終わり”を当たり前に大事にすることを当面の目標にしておいて、きっと間もなくさっぱり忘れてしまうだろうから、ここに記しておく。


中古で古いピアノを買ったら、コードが付いていなくて為すすべがない。

旧式のコードは電気屋にも楽器屋にも売っていなかった。

アマゾンのほしい物リストに入れたものはいつまで経っても買わないくせに、初対面のくだらないガラクタを衝動で愛してしまうこの癖は一生治らないだろうな。

買わないほしい物リストという語義矛盾。くだらないものは愛おしい。

コードは、おとなしくネットで注文することにした。



文章や絵を書いている間は脳みそが少しばかり静かになる。

誰のためでもなく、自分のために物作りをしている。



終わり。

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